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【日本という国】 人垣もできず、見守る人もいず、線路の中の遺体は「この世」から旅だって行った。

 突然 車内で「ピン、ピン、ピン」というような警告音のような小さな音が鳴り始めた。昨夜の22時40分ごろ「南福岡駅」での出来事である。私の乗っていた電車は「特急電車」の通過待ちをしていた。列車から降りるものは降り、乗車するものは座席についていた。特急(かもめ103号)がゴーゴーと走り去った。さあ、これで発車。そんなときであった。車内から見ていて、特段変わった様子はない。それなのに発車しない。車掌が列車から降り、ホームの反対側を覗き込んでいる。駅員なのか、乗客なのか分からぬが、二言三言、何かを言っているようである。

 『ただいま安全を確認しております。』なんとも不思議なアナウンスが流れた。それと共に後ろの車両から大勢の客が降りてきた。全く不思議な情景だ。まだ、起きたことが理解できない。特急が行ってから10分程度経過したのではないか、と思えるころ、「南福岡駅構内で人身事故が発生しました。」と、車内放送があった。後ろの車両から降りた乗客のうち何人かがホーム反対側を覗いている。いや、大半の客は一目散に(といったほうが状況的にはあっていると思うのだが)改札口を目指して駅から出ようとしている。

 経験された方はお分かりと思うが、鉄道の人身事故の場合、数時間は列車が止まる。どこで事故かは分からぬが、今の時間で事故が発生したなら今日のうちに動くことは無かろうと思い、私も駅を出ることにした。まさか目の前でそんな事があったとは思わなかったが、「何を覗いているのだろう」と、反対側のホームのほうへ行って見た。ゴム製のサンダルが線路の脇に落ちている。ホームの端を見ると、さっき通過した「特急」電車がホームに掛かるかどうかという位、駅の近くに止まっている。

 逆のホームの端を見てみると、線路の中央に四角の鞄のようなものが光って見える。そして、その前の線路中央に布切れのようなものが見える。『まさか、人』。ところが、人が集まっているわけでもない。みな、そそくさと通り過ぎて改札口へと向かっている。恐る恐るというか、行ってみると、うつ伏せになった男性が見えた。暗かったので、なんともいえないが、電車とぶつかったにしては、血も出ていないように見えた。ただ、レールの近くに伸びた左足のくるぶしから下が無いように見えただけで、首の位置が少しおかしいかな、とは思ったが、ひょっとして線路の中央で身を伏せたのではないか、と思えるような真ん中でうつぶせになっていた。

 まだ、駅員も集まっていない。警察も救急車すら来ていない、事故直後の様子である。こんな時、どうすれば良いのか、考えても答えは出ないが、人垣もできず、見向きもせずに大半の人が通り過ぎていく、不思議な光景であった。私も、その一員であろう。帰宅する算段を考えた。「タクシーしか、なかろう」と、駅から出てタクシー乗り場へ…。案の定長蛇の列で、一台もない。ここで乗ると、大変な待ち時間になるだろう、と歩いていく人々について大通りまで出た。

 運よく『空車』のタクシーを拾い、ほとんど予定通り程度の時間で帰宅したのだが、なんとも「しっくり」しない日であった。一人の見た目は余り豊かそうではない人((履物や服装から見て)の命が消えた。翌日の新聞にも載っていない「小さな事件」である。どんな方だったのか、知る由もない。ひっそりと『この世』から旅立ったのだろう。

 この件をツイッターで探してみると、確かに多くの方がツイートしている。しかし、その反応は『いい加減にしてよ。かえれないじゃん。』 まあ、そんなところに集約できよう。人間なんて、本当に小さくて、はかない者だと思う。今日は何も変わったことなく移り変わっていく。小さな石ころのように1つがあろうとなかろうと、世の中には関係しない。これが日本社会のありのままであり、私も毎日過ごすことで、そういう社会に慣れてしまっているのだろう。ご冥福を…
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-  2017, 10. 30 [Mon] 14:36

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