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福島第一原発爆発事故の基礎知識 Ⅷ-1  低濃度汚染が、なぜ小児ガンを引き起こすのか? 

 市民エネルギー研究所さん が南ドイツ新聞の記事を紹介している。 
                                     (抜粋引用)
 ドイツ連邦放射線防護庁は原発周辺のガンの危険性、特に幼児の確率が高いという調査結果のレポートを発表した。

 ドイツの原子炉がある場所の周辺では子ども(幼児)が白血病にかかる率が高い。マインツ大学の研究者は、原子炉の5km 以内の周辺で37人の子どもが白血病にかかっている事実をつきとめた。

 この調査は1980年~2003年の間にされたが、この間の他の地域での平均は17人であるから20人多い。その研究者は「私たちの調査研究では、ドイツで、原発の近くに住んでいれば5才以下の子どもがガンまたは、白血病にかかる可能性が高くなっていることが確認された」と言っている。
 エムスランド原子力発電所(出力140万キロワット)の展示模型
           ドイツ エムスランド原子力発電所の模型 
 これまでの調査では研究者同志で結論が分かれたり矛盾した結論や解説があり、原因究明の意見が分かれ、決定できなかった。しかも調査方法についての批判もあった。

 だからドイツ連邦放射線防護庁は、今回のこの新しい調査に原発推進派も批判派も調査に関わるようにした。マインツの研究者たちは、調査の範囲規模を大きくした。

 その1つはドイツには子どものガンは登録されているが、この中の5才以下の子どもたちを引き出して、1980年~2003年までガンにかかった子どもたちと原発の近くで育ってなお、ガンにかかった子どもピックアップした。距離の誤差は25m以下である(25mのメッシュで調査した)。

 子どもたちが原子炉に近ければ近いほどガンにかかるリスクは高く、遠ければ遠いほどリスクは少ない。でも、ガンにかかる率が高くなったことに対しての責任が、原発にあるとは言えない。

 というのは、放射線の量が医学的にみて低すぎるから。現在の科学のレベルでは、この結果は放射線生物学の観点からは説明できないので放射線の量との関連性に関しては証明はできていない
    ドイツ原発
                  ドイツ原発の場所 
 しかし、原発との近ければ近いほどリスクが高いという関連性は証明された。

 この調査研究の確かさの1つは25mのメッシュであることである。ドイツでは1980年~2003年の間に13373人の子が5才以下でガンにかかった。

 そのうち29人の子は原発の5km 以内に住んでいることでガンになったといえる。1年に1.2人のケースである。5893人の白血病のケースでいえば、その中の20人の子どもが5km以内に住んでいることによってかかった。これは1年に0.8人のケースとなる。

 そうなると16の原発周辺地域の5km 以内で37名の白血病のケースが実際にあったので、統計的平均は17名であったから、この結果は、ドイツでは明らかに原発周辺との関連が有ると言えることが判った。
           南ドイツ新聞の子供のガンと原発の関係
            南ドイツ新聞の子供のガンと原発の関係 
 ドイツの核施設周辺での許容量は0.3ミリシーベルト/年。(どこかの国の文科省のように、20ミリシーベルトではない。) 実際の汚染はこれよりも低い。5 km 周辺の50才の人は、0.00009から0.0003200ミリシーベルトの間であった。自然界の放射線は、1.4ミリシーベルトであり医学の放射線は1.8ミリシーベルトである。

 ドイツ連邦放射線防護庁が依頼したこの新しい調査によると、原発周辺地域では幼児(6才未満の子ども)がガンにかかり、とり分け白血病にかかる率が高いことが明らかになった。今までも、このような疑いがあるという調査結果は何度か出てきてはいたが、今回は科学的に疑う余地がない、ゆるぎのない結果がでた

 なぜ、幼児が原発周辺でガンにかかるのかは誰も理解できない。科学者たちが言うには、これは、周辺住民の公式の放射線許容量の何千分の1のレベルであり、しかも、飛行機に乗ってあびる量よりも又、レントゲン照射の量よりも低く、さらには、地球上の自然界の放射線レベルと比べてもずっと低いのに、なぜ、このような結果になるのかは、ほぼ説明がつかない

 この調査結果は原発を止めるに値するインパクトを持っている。と同時に、技術に対する一般的な恐怖感をもっと強くするだろう。この調査発表に対する反応は、原発の危険よりももっともっと大きいだろう。それはこの事実は、論理的に考える人にはイヤなことであろう。

 しかし、科学が原発についての危険を全て分かっているかそうでないということが明らかになってしまった。これまでの原発の危険に対する科学は、間違っていた。「今まで知られていなかった原発の危険性はない」といってしまうこれまでの傲慢さは、この調査の結果で誰も持てなくなった。     (引用終り)

 このドイツのデーターは、当時なぜか日本では報じられていない。0.3ミリシーベルトで規制して、実際はそれ以下の汚染であっても、発ガンが増えるということは、今回の日本のように、突然許容量を10倍、20倍、平気で100倍などに変更することは、後世に悔いを残すのかもしれない。

 「すぐさまには影響がない」は、昔からの「方便」に過ぎない。
     沈黙の春
          レイチェル・カーソンさんと「沈黙の春」 
 ところで、この低濃度汚染と発ガンなの関係を聞いて、思い出すことはないだろうか。 「そう、環境ホルモン」が、そうであった。

 最近は話題とならないが、1962年米国で出版されたレイチェル・カーソンさんの「沈黙の春」という著書が紹介され、一事は世の中が騒然とした。PCBやDDTといった毒物は、濃度が一定レベル以下になると、無害である、と一般に信じられていた。

 ところが、これらが一定以上濃度が薄くなる(プールの中に目薬1滴というような濃さ)と、生体が体内で合成したホルモンと誤認し、本来のホルモンを撹乱してしまう作用があることが分かった、というものであった。この化学物質も、人間が作り出した「自然界に存在しない」物であった。

 企業秘密の壁に行く手をふさがれ、自由主義経済の中で、企業からの資金を得られず、多分停滞したままなのだろう。最近は、話題にも上らない。

 海洋に、空気中に放射性物質を放出して、希釈されるから安全などという考えは、「沈黙の春」で、すでに過去のものとなっている。それは、100年前の学説に等しい。
     逆U字を描く環境ホルモンの働き
通常、生物に与える化学物質の影響は、量が多くなるほど強くなるものが多く、また、その様に信じられてきました。しかし、内分泌かく乱化学物質として疑われている物質では、必ずしも単調に増加しないことが実験的に示されるようになってきました。例えば、 化学物質を動物に与えた場合、一旦何の影響も見られなくなっても、更に低い用量(無作用量よりも少ない量)で影響が見られる といった事例が報告されています。この用量作用曲線(上図参照)を描くと逆U字型になる部分が見られることから「逆U字効果」と呼ばれています。このことは、大量に暴露した時に得られたデータから、低用量での影響を予測することが出来ない可能性を意味しています。

 ウランは最終的に安定する「鉛」となるまでに次のように核分裂を繰り返す。238U → 234Th → 234Pa → 234U → 230Th → 226Ra → 222Rn → 218Po → 214Pb → 214Bi → 214Po → 210Pb → 210Bi → 210Po → 206Pb
 
 この中のいずれかが (最後のPbのみ放射性ではない) 環境ホルモンのように、低濃度で生体に影響する力があるのかもしれない。自然界にないものを作り出してしまった人間への「神からの忠告」であろう。

 濃度が低いから問題ないとか、飛行機への放射線の量より低いなどで、無害を叫ぶのは19世紀までの考えではないのか。今、データーとして、低濃度の正常運転の原子炉がなぜか影響していること、この事実しか「私たち」は知らない。

 それは、レイチェル・カーソンが、かもめの卵が孵化しない、と疑問に思ったことと同じである。なぜそうなるのかは、今から「現代の科学者」に与えられた課題である。

 「安全だ、安全だ」という前に、科学者として「何をすべきか」を考えるべきであろう。


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