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汚染水に含まれる 『トリチウム』の害は 本当はどうなのか、 日本とヨーロッパでの 考え方の違い。   マスコミ対策が 完全に行われた日本の現状

 9月18日に 「汚染水で 東電は行き詰る」という記事を書いた。 その後、 世に言う 「有識者」の方々が 汚染水の流出は 「問題にならない」という 主張していることを 池田信夫氏や 青山繁晴氏らの 論文や テレビ番組を通じて紹介した。 

 トリチウムに関しては、 こういう方々の発言もあり、 薄めれば 安全、 どこにも存在するありふれたもの という一般認識の流布に成功したようだ。 日本では ほとんど報道されないが 「イギリスの再処理工場が 閉鎖された」 という。  再処理工場に関しては、 「原発推進」を掲げる人々が、 イギリスなどでも 周辺国からの苦情は無い、 などと 良く例に挙げている。 ところが、 このニュースが どこにものっていない。 以前 チェックしておいたはず … あった、あった
                                           イギリス BBC 7 June 2012 英文サイト 引用
      Sellafield Thorp site to close in 2018

 Sellafield's Thermal Oxide Reprocessing Plant (Thorp) in Cumbria is to close in 2018, it has been confirmed.  The Nuclear Decommissioning Authority (NDA) said it had completed its strategic review of the options for the management of oxide fuels.

                     Sellafield Thorp site to close in 2018

 It said processing contracts would be completed by 2018, at which time Thorp would cease reprocessing activities prior to decommissioning. Prospect union said the announcement was a "great disappointment".
                                                     原文 リンク → イギリス BBC


 今 話題の 地下水汚染の『トリチウム』は、 除去する技術は無いから、 いずれ 六ヶ所村の再処理工場で 全量が 海に放出される。 日本は原発を長年動かしてきたので 相当量のトリチウムを保有している。 青森から放出するか、福島から放出するかの違いしかない。 という意見もある。 多分 そのとおりだろう。

 東電の発表では 地下水中に 9月4、5日の検査では検出されなかったが、8日に採取した際は4200ベクレル、9日に採取した際は2万9千ベクレル、10日には同6万4000ベクレル、 15日には15万ベクレル、 月が替わって 10月10日には同32万ベクレル、 18日には 79万ベクレルを検出したのだそうだ。 国民は この話にもう 飽きてしまって 関心がない。

 日本の水道水の中にも 含まれる (自然由来のトリチウム) トリチウムは 1㍑ 1ベクレル程度である。 この数字が いかに異常であるか … それでも、 (ほとんど) 無害で 人体に影響はないとする 意見が 日本では多い。 ヨーロッパでは、 世代を超えて影響する (何世代にもわたって) 、 そういう見方が強い。 

 さて、 日本のプルサーマル用 MOX 燃料を作るメロックス工場は フランスの南部、 地中海に注ぐローヌ川下流域のマルクールにある。敷地のすぐ近くには高速増殖炉のプロトタイプ「フェニックス」がある。近郊には童謡で知られるアビニョンの町があるが、町の地下水にトリチウム汚染が広がっていることがわかっている。

 通常では1ℓ当たり2Bq程度のものが、多いところで地下水から280Bq/ℓ検出され汚染が広がっていることがつき止められている。 -- などと ニュースになるくらいだから、 79万ベクレルという報道は ヨーロッパにとっては 驚愕する数字かもしれない。 それに対し、 政府に反対する運動も デモすら起きない 日本は 『理解不能』であろう。

     青森県六ヶ所村に建設中の再処理工場を訪れ再処理はやめた方がよいと言うフランスの「怒れる母たち」。
     青森県六ヶ所村に建設中の再処理工場を訪れ再処理はやめた方がよいと言うフランスの「怒れる母たち」 

 世界で フランス以外にやっていない 「再処理工場の操業」も 早く開始せよ、と 「有識者」 は言う。 わざわざ、 フランスから 「おばちゃんたち」が やってきて、 『やめなはれ』と 言ってくれているのに …

   韓国が羨む「再処理特権」 六ヶ所の稼働を急げ  金子熊夫 (外交評論家・エネルギー戦略研究会会長)

 一般の読者のために少々説明を加えると、現行の韓米原子力協定は、旧・日米原子力協定と同タイプで、米国産の核物質(ウラン燃料)の再処理、濃縮、第3国移転は米国の事前承認がなければできないという明文の条項がある。

 日本は、77年春、カーター政権が発表した新核不拡散政策の適用第1号として、当時ほぼ完成していた茨城県東海村再処理施設の運転に「待った」をかけられた。

 果たせるかな、日米は文字通り激突した。日本は、福田赳夫首相と宇野宗佑科学技術庁長官兼原子力委員長(ともに当時)の下で挙国一致、正攻法で「再処理とプルトニウム利用は、資源小国日本のエネルギー安全保障上必要不可欠。日本は被爆国として非核に徹しており、再処理を行っても核武装や核拡散の心配は無用」と強硬に主張し続け、ついに米国から条件付きの承認を勝ち取った。                                    (引用終り)

 『韓国』も羨む施設なのだそうだが、 日本が必要な理由は 「核兵器所有の野望」以外に何もない。 原発の設置理由が 『核兵器開発』なのだから、 これをあきらめてしまえば 原発存続の理由は ほとんどなくなる。 

 しかし、 2兆円以上をつぎ込む 六ヶ所村の再処理施設は アレバ社が 請け負っているのに、 なぜ、こんなに 遅れるのだろう、 そう 不思議に思いませんか。 フランスでは 順調に (?) 動いているのに、 同じものを建てるのに 何を手間取っているのだろう、 反対派の私ですら そう思っていた。

 ところが、 六ヶ所村の 再処理施設では (本国にはない) 最新技術が 取り入れられており、 どうも それがうまくいかない 『原因』らしいのだ。 -- 知恵袋の解答の一部から --

 自民党政治家は「高い技術」などと言いますが、実はそれは、無理やりに核兵器に使える純粋プルトニウムを抽出できる工程が可能な方式を取っているからです。その方式は世界の核大国の方式とは違い、本来は純粋プルトニウムを抽出しない装置に、抽出できる原理を応用したものです。

 それは新しい方式で、技術的に確立していないのでうまくいっていないわけです。しかも核大国からは、なぜ純粋プルトニウムを抽出できる原理を使うのかという疑惑を招いています。
 
  オーストラリア ABCのニュースでも そのことがわかります。 信頼されていません。↓

       

 2012年1月,フランスにある19の原子力発電所(54基の原子炉が稼働)の周りで、小児急性白血病の発病率が全国平均の約2倍高いという衝撃的な発表があった。これにより「発病頻度と近接する原子力発電所の間にはっきりした相関関係があることが立証された」とする研究(要旨)が、米国の医学誌に2012年1月5日に掲載された。

 調査は,フランス国立医学研究機構(INSERM)や放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)、ヴィルジュイフ国立小児血液疾患登録機関などが行なったもので信頼性は高い、とされている。2002年から2007年の間でフランスで診断された急性白血病の症例数と対照群を比較したという。結論は「原発から5km以内に住む5歳以下の子どもたちの発病率が、20km以遠にくらべて1.9倍(オッズ比)高く、標準発生率(SIP)もフランス全国平均の1.9倍だった」としている

 しかし報告では,フランスの原発近くで急性白血病の超過発生の危険性を示す傾向があることはわかったものの、原発からのガス放出との関連付けがまだ解明できていないので,この発見は関連する潜在的な危険因子の調査が必要だとしている。  -- 中略 --

 セラフィールド再処理工場(現在はほとんどの施設が閉鎖されている)は,イングランド北西部の湖水地方の西側、アイリッシュ海に面した町シースケールのそばにある(セラフィールドとは元の村の名前。隣町がシースケール)。もともとは核兵器用のプルトニウムをつくる目的で1950年に再処理工場が建設され,その後、イギリス初の発電用原子炉がつくられた。当時は再処理工場の運転に伴って出る低レベル核廃棄物は液体・個体ともにアイリッシュ海に捨てられていた。また放射能で汚染された核燃料プールの水も除染せずに海に放出していた。

 1983年に地元のテレビ局が,セラフィールド再処理工場周辺に住む子どもたちに白血病が多発しているとする番組「Nuclear Laundry」を放送した。特に、工場から2kmほど南にある人口2000人ほどのシースケールの町の幼児の白血病発病率がイギリス平均の10倍を超えていたというものだ。同様な高い発病率を示した地域がもう一つあり,それはスコットランドの北端にあるドーンレイだった。ここでは1979年から高速炉用再処理工場が運転されていた(1997年に閉鎖)。

 これらの二つの地域の異常な白血病発病率を精査する委員会がイギリス政府によってつくられ,マーティン・ガードナー教授らが調査にあたった。そして委員会は1990年に「父親が被ばくしていた場合,その子どもの小児白血病の発病率は8倍高くなる」などとする報告を行った。

 これに対して,再処理工場を経営するBNFL社に雇われた科学者らは,白血病の多発は放射能とは関係なく,ウイルスによるものだと反論しガードナー教授らを攻撃した。古くからの農村地帯にあった町に核施設で働く労働者がたくさん移住し、その際に白血病ウイルスが持ち込まれ感染したという説だった。

 テレビ局の調査報道により、セラフィールド周辺のプルトニウムを含む放射能による環境汚染はよく知られるようになった。同時に小児白血病の高い発病率も政府の調査によって明きらかになった。しかし,イギリスの保健当局は「周辺環境の放射能レベルは白血病やガンを引き起こすほどではなく,汚染のレベルはあまりにも低い」として,放射能が原因とする住民の主張を一貫して拒み続けてきた。

 日本同様、 イギリス、フランスでも 政府は一貫して 関連性を否定している。 ただ、 違うのは 報道機関が こういう事件を番組として 報道することで 人々の注意を喚起していることだろう。 

 昔は日本にも そういう報道はあった。                     以下 磯野鱧男Blog より 引用

「1961年、アメリカのFCC(連邦通信委員会)委員長(当時)ニュートン・ミノーは、アメリカのテレビ界を評して“一望の荒野”と表現した。血腥(なまぐさ)いギャグもの、残酷描写が多い戦争ものなどのテレビ映画、騒々しいだけの公開コメディ、射幸心をあおるクイズ番組などが横行し、真っ当な番組が少ないアメリカのテレビ界を批判したものだが、原発報道に関して言えば、日本のテレビ界は一貫して“一望の荒野”状態にあったし、それは現在でも続いている。」

「突飛かもしれないが、筆者は、仮に真っ当な原発報道や原発番組がテレビで放送されていれば、福島の原発事故は起こらなかったのではないか、と考えている。つまり、原発は作られず、事故も起こらず、ということだ。-略-」

「かつて、コンピュータ付きブルドーザーと称され、日本列島を乱開発によって地ならししようとした首相がいたが、原発問題をめぐる、テレビ局への政府や電力会社の姿勢は“CM付きブルドーザー”と言えるだろう。巨額の原発マネーを使って民放を屈服させ、政治力にものを言わせてNHKを黙らせ、テレビ全般を地ならしし、果てなき荒野を生み出してきたのだ。-略-」

「「太古の昔から地球に降りそそがれている隕石や放射線。このほかに私たちは、大地や食べものから放射線を常に受けています。すでに使われている原子力発電所からの放射線は、これら自然界の放射線よりも、はるかに少ない量なのです」
 -略-この竹内 (竹内均東京大学名誉教授) CMは各民放に持ちこまれたものの、最初は、大部分の局が“不当表示”であるとして代理店に突き返した。一部分に手が加えられて再度、局に持ちこまれ、いくつかの局から放送された。」

「電力会社側に立って、堂々(?)と報道を監視している局もあった。
 1972年当時の関西テレビ(フジテレビ系列)であるが、マスタールーム(電波を流す元締めのセクション)には次のような掲示が、目立つように張りつけてあった。

左記の三項目のニュースの場合、関西電力は番組提供をおこなわない。
1. 関西電力を含む電力会社の設備事故。
2. 加害者が関西電力の場合の人身事故

3. 電力会社が公害訴訟ならびに損害賠償訴訟の被告となる場合。ただし、大阪府の公害対策審議会、関西電力側の公害対策に関する談話は含まない」
 まさに、関西電力って何様なんだ!? ざけんじゃねーっ! っと、まともな視聴者は叫びたくなるような内容である。」                (引用終り)

 有名な事件では、 広島テレビのドキュメンタリー「プルトニウム元年」もある。 日本のマスコミが機能しなくなった 最初のころの事件である。

 広島テレビの岡原武氏のドキュメンタリー「プルトニウム元年」3部作は、地方の時代映像祭で大賞を受賞するなどきわめて評価の高い作品だ。被爆地・広島の視点から原発問題を直視した鋭角的な視点がきわだつ。

 放送前の社内プレビューで社長が「内容が一方的だ。君らこれを放送するんか」と言い放ったという。放映から1年後、岡原氏と上司の報道局長、プロデューサーら4名がそろって営業局に配転された。 電力会社はCM出稿をストップした。電力会社の第二労働組合がかなり露骨に局に抗議を申し入れてきたという。岡原氏の件はあまりにも露骨なケースだ。岡原氏はそれから丸10年間、報道現場から外された。以降、広島の地から原発問題を正面から扱う番組はほぼ消滅した。原爆はOKだが原発はNOとされたのである。

 今日も 東電の発表で 堰から雨水が 20箇所で漏れたが、 環境への影響はない、などと 大本営発表が続く。 堰内の雨水を タンクに移送するポンプは 「ウソかマコトか」しらぬが、 リース物件であるらしい。 リース会社としては、 返ってきても (放射能汚染で)他に転用できないから 「中古」のポンプを貸し出すらしいが その事が さらに状況を悪くする。との話も聞く。 

 22世紀には、 東洋のはずれに 「日本という島国」が あったらしい、などという話にならぬように 願いたいものだ。


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